区点番号5-17と5-86の使い分け指針
「」と見える文字を、どう入力するか
2003年5月1日 公開
2011年9月10日 最終修正
青空文庫
「」と見える文字の入力指針
底本上で、「」と見える文字に関しては、前後の文章の流れを読んで、次のように入力してください。
1 「け」と読む片仮名と思われるものは、区点番号5-17の「ケ」で入れてください。
2 「こ」「か」「が」と読むと判断が付けば、区点番号5-86の「ヶ」で入力してください。
例:一ヶ(「こ」)
二ヶ所 六ヶしい(「か」)
霞ヶ関、槍ヶ岳(「が」)
3 底本が2に対応する文字を小書きせず、他の文字と同じ大きさにつくっている場合は、ファイル末に以下のように注記してください。
※底本は、物を数える際や地名などに用いる「ヶ」(区点番号5-86)を、大振りにつくっています。
この注記をどこに書き込むかは、「青空文庫収録ファイルへの記載事項」を参照してください。
解説
上記作業方針を採用する理由は、以下の通りです。
【「」と見える文字の二つのルーツ】
底本上で「」と見える文字には、異なった字源を持つ、二つの流れがあります。
一方は、「介」の一画を省いた形から起こった、片仮名の「」です。
そしてもう一方が、「个」を源とする流れです。一、二所、三日のように用いられ、それぞれのケースで、「こ」「か」「が」と読み分けられる文字が、ここから生まれました。
二つは元々、別物でした。
参考:
「言葉に関する問答集 総集編」文化庁編、財務省印刷局
1995(平成7)年3月31日初版
2001(平成13)年3月21日4刷
「ところで、数詞に続けて物を数えるときには、旧表記では「五ヶ所」「五ヶ条」のように小さく「ヶ」と書くことも行われた。また、固有名詞の場合にも「駒ヶ岳」「槍ヶ岳」「青ヶ島」のように書かれる。
これらは、一般には、片仮名の「ケ」を書いて「カ」または「ガ」と読むのだと意識されているが、本来はそうではない。この「ケ」は片仮名ではなく、漢字の「个」(箇と同字)又は「箇」のタケカンムリの一つを採ったものが符号的に用いられてきたものである。」
「広辞苑」岩波書店
1955(昭和30)年5月25日第1版第1刷発行
1974(昭和49)年9月20日第2版第8刷発行
「か【箇・个・】」の項
(の字は、「个」の転という)物を数えるに用いる語。個。「―条書」
「け」の項
…片仮名「」は「介」の略体。
「日本国語大辞典 第七巻」小学館
1974(昭和49)年1月10日第1版第1刷発行
1987(昭和62)年9月20日第1版第13刷発行
「け【け・】」の項の〔付記〕
〔付記〕片仮名の「」を、物を数える「一カ年・一コ」の「箇」に代用することがあり、近来は「一・二」等を、「イッケ・ニケ」等とよむようにもなった。
また、「君代」「越谷」「八岳」のように連体助詞の「が」にあてることがある。これは前例の「三日(さんがにち)」等の「」の転用である。これらの「」は、もともと「箇」の略体「个」から出たもので、かたかなとは起源を異にするが、字形としては区別はなくなっている。
【二種類の「」は区別が付くか】
見た目では、区別が付く場合と付かない場合の両方があります。
「言葉に関する問答集」にあるように、小さく書かれている場合には、見た目だけでこれが、「个」から起こった、物を数える際に用いる語だと分かります。
一方、「日本国語大辞典」の言うように、字形としては区別されずに用いられている場合には、その文字だけを見ても、それが「介」起源のものか、「个」から起こったものか判断が付きません。
ただし、見た目では分からなくても、文章の流れを読めば、その字がどちらに由来するものか、たやすく見きわめられます。
前後の流れから判断して、「け」と読むことが明らかな仮名であるなら、「介」に由来する片仮名。
「こ」「か」「が」と読むものなら、「个」に由来する語です。
(「日本国語大辞典」があげている、「「一・二」等を、「イッケ・ニケ」等とよむ」という例は、この判断基準からは外れます。ここではこれを、日本語として定着するには至っていない、誤りとして排除して話を進めます。)
【青空文庫が採用している文字コードからの求め】
青空文庫は、現在のパソコンで広く使えるようになっている、JIS X 0208 という文字コードを用い、この規格の約束事に従って、作品をテキスト化しています。
この規格では、「」と見える文字の「居場所」(区点位置、コード・ポイント)を、二つ用意しています。
一つは、「5-17」です。これは、片仮名の「」のために、設けられたものです。
片仮名の「」を入力する際は、「5-17」を用いるのが、JIS X 0208 の規格にのっとった対処です。
もう一つ、「5-86」にも、「」と見える文字のための場所が、用意されています。
こちらは、「个」に由来して、「こ」「か」「が」と読まれる文字のために、設けられたものです。
この字を入力する際は、「5-86」を用いるのが、JIS X 0208 に合致した対処です。
【二つの文字をどう入力するか】
底本が、「」を小さくつくっている場合は、見た目から、「个」に由来して、「こ」「か」「が」と読まれるものと分かります。
これらは迷わず、「5-86」で入力してください。
底本が、「」を大きくつくっていて、見た目からはどちらか判断できないときは、文章を読んでください。
その字が、「け」と読む片仮名と読めるなら、「5-17」で入力してください。
「こ」「か」「が」と読むと判断が付けば、「5-86」で入力してください。
修正履歴
2011年9月10日:
「解説」中、片仮名の「ニ」を用いて「ニ所」としていたところを、「二所」に改めました。