北海道の奥地深く、標高千メートルの地点では、冬中気温は普通零下十度以下で、雪の結晶は顕微鏡下に、水晶の骨組のように繊細を極めた姿を顕している。その六方の枝の端の端まで行き渡った輪廓の鋭さは、近代
自然は
現実の問題としては、雪の結晶は昇華作用が激しいために、零下十度の場所に保存しておいても、間もなくすっかり形が変ってしまう。それで零度以下でも凍らず、水も溶かさぬ液体の中に結晶を浸しておいて、低温のままでこの液を固める方法があれば、望みの雪の化石が出来るはずである。コロホニウムをクロロフォルムに溶かした液はかなりこの目的に
これは十勝岳の中腹、白銀荘という山小屋での真冬の夢である。
(昭和十年十一月『東京朝日新聞』)