帰省
漢那浪笛
若夏の入江の西に、
萎ゆる帆を静かにたゝみ、
大船の錨なぐるや、
波止場には、吾かなつかしき
南国の男女のあまた、
すゝみよる、艀むかへぬ。
艀より人力車にうつり、
石原を、左右にゆれて、
店先の軒をたどれば、
かけつるす芭蕉実のかをり
夏風にゆる/\薫じて、
故郷は夢にさながら。
父母や妹をしのび、
過ぎゆけば、榕樹しげれる、
門に着き――涙こぼれぬ。
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